2012年09月01日

手作り酵素(1)

6月初旬、チャレンジPPK、バンクシアフィットネスの仲間とともに岐阜県郡上市北部に位置するひるがの高原で、“手作り酵素体験”を楽しんできました。ひるがの高原の山野に自生する野草を発酵させて手作りで酵素をつくるイベントです。



古来日本民族は味噌や醤油、漬物、梅干、納豆をはじめ、数々の発酵食品を生み出すなど微生物と上手に共生し、自然とともに生きる知恵を磨いてきたことで知られています。日本は森林率世界第2位、自然の恵み豊かな発酵王国であるにもかかわらず、身のまわりには不自然な加工食品があふれかえっていて、日本民族の健康に暗い影を投げかけています。



今回のイベントのキーワードは“手作り”,“野草”,“発酵”,“酵素”,“常在菌”です。

そこで本稿では「手作り酵素」というテーマを通して見えてくる自然と人間社会のあり方について考察することにいたします。



人体常在菌


“宇宙は愛”といわれています。人は“宇宙という偉大な母親”の愛を受けて、この世に生を受けたとするなら、人の体とその生活環境には、この大自然の中で生き抜いていくために必要なことはすべてととのっていることになります。


さて手作り酵素です。野草を摘んできて砂糖とともに容器に入れて、手でしっかりかきまぜると発酵が進んでいきます。野草の細胞内のミトコンドリアが砂糖をエネルギーに変換してくれているのです。


できあがった“手作り酵素”には自分の手に宿っていたさまざまな細菌(常在菌)が含まれていますので、それを食べると腸の中に常在菌が増えて健康になるための基礎がととのいます。


私たちが元気で生きていくことができるのは腸や皮膚など人の体に棲息している常在菌のおかげなのですが、菌というとなにやら恐ろしいものという先入観があるのではないでしょうか?


人の体には数百種類、100兆個を超える細菌が常在しているといわれています。


細胞の数が60兆個ということですから、莫大な数の微生物が人体には棲んでいて、人が安全に生きるための、縁の下の力持ち役を引き受けてくれています。


赤ちゃんは無菌状態で生まれてくるのだそうですから、人体の細菌はどこからやってくるのでしょうか?


人体の細菌は、赤ちゃんがお母さんの産道を通って生まれてくる時に形成されます。


産道はお母さんの体液でびっしり覆われていますので、それが赤ちゃんの頭のてっぺんから足の先まで付着するのです。


それまで赤ちゃんの腸の中は無菌状態なのですが、しばらくするとビフィズス菌などがやってきて、腸内細菌叢が出来上がるのだそうです。人はすごいドラマを経て生まれてくるのですね。


その後、赤ちゃんは細菌に取り囲まれて育っていくことになります。細菌は主として腸管の中に棲んでいるのですが、口や鼻の中、気道や尿路、皮膚表面にも棲みついて、人体常在菌として私たちの体を守ってくれることになります。


赤ちゃんは産道を通るときにお母さんから細菌をもらい、細菌と触れ合うことによって、そしてさらに、お母さんからもらうおっぱいで抵抗力をつけて、すくすくと育っていくようになっているのです。


ところが近年、こんな大事な細菌を消毒によって取り除いてしまうという分娩が行われています。アトピー性皮膚炎などの免疫疾患が急速に増えていますが、その背景には私たちの体を守ってくれている細菌を目の敵にして、何かというと細菌をやっつけるために消毒するという生活環境があると思うのです。


忘れてならないもの―――人体常在菌とお母さんのおっぱいです。



お母さんのおっぱい


未熟児の保育システムを確立するほか、「母乳は愛のメッセージ」として母乳育児の必要性を訴え続けてこられた、国立岡山病院名誉院長・故山内逸郎氏は「母乳育児は赤ちゃんのためだけではなく、お母さんの体と心のためにもいい。いいママになるための第一の条件は母乳で育てること」と断言しておられます。

紀子様がご懐妊され「母乳で育てる」と宣言されたとき、母乳哺育の素晴らしさをたたえて出された手紙をはじめ、山内氏のさまざまなメッセージが発表されていますので、要約してご紹介させていただきます。


*牛乳あるいは人工乳に比較すると母乳のほうがよいという発想がありますが、比較することが間違いで、ヒトの子にはヒトの乳がいいのです。母が直接授乳する母乳、哺乳瓶ではなく母から直接哺乳する母乳ということに母乳の意味があります。


*大切なことは母親の胸から直接飲ませることです。それが刺激になって、脳下垂体からプロラクチンという母性愛ホルモンが分泌され、母親を“赤ちゃんが可愛くて可愛くて仕方がない”ような心理状態にしてしまいます。直接の授乳によってはじめて母性愛がわいてくるのです。


*母の胸から哺乳した子は病気をしないものです。母乳の中には、いろいろな免疫体や抗菌性物質、感染防御物質、脂肪消化酵素などの有難い成分がいっぱい入っているからです。


*母乳で哺育することに不安をお持ちの方もいらっしゃいますが、母乳哺育成功の三条件を守っていただくと心配ありません。


(その1)生後30分で最初の授乳をすること。このときたくさん母乳が出ることはありませんが、その後の母乳分泌のためには大きな意味をもっています。


(その2)生後24時間以内に7回以上授乳すれば成功間違いありません。規則正しく授乳しなくても、授乳時間は不規則でもOKです。


(その3)いつもお子様と同じ部屋で一緒にいるようになさってください。


*大切なことは母乳という「モノ」にあるのではなく、「授乳」という行動にあるのです。

(引用ここまで)


自然の摂理、人体の仕組みの中に「宇宙の愛」を感じることができるのではないでしょうか?(つづく)


【参考文献】
山内逸郎『母乳についての22の手紙』(山陽新聞社)
河村文雄『人類の命を救う手作り酵素』(十勝均整社)

  


Posted by THDstaff at 10:00